UXを考える上での落とし穴 Part-2
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UXを考える上での落とし穴 Part-1 では、「分かっている人(知らない人)は、知らない人の気持ちなど実は分からない」事がUXを考える上で問題になることを書きました。
今回は、もう一つの落とし穴である「ユーザ(顧客)は何が問題でどうすればいいか、何がいいかを実は分かっていない」について書きます。
アンケートやヒアリングで「もっとこうしたほうがいい、という意見や改善点があれば教えてください」という質問をよく見かけます。ユーザー(顧客)から直接不満点などを取り入れる良い機会です。関係者には気がつかないような良いアイデアを入手できるチャンスでもあります。しかし、これらの意見を鵜呑みにしてしまうのは危険です。
- 「人々に何が欲しいかと尋ねたら、『もっと速い馬が欲しい』だった」(フォード・モーター創設者ヘンリー・フォード)
- 「多くの場合、人は形にして見せてもらうまでは自分は何が欲しいのかわからないものだ」(スティーブジョブズ)
- 「テスト中、誰もが大きなのが良いとコメントした。実際に発売すると、『こんなに大きいのか、な んで?』と叩かれ、競合他社製品(任天堂ゲームボーイ)に顧客が流れた」(リンクス設計者)
これらは良くマーケティングなどの世界で出てくる有名な話です。
自分がヒアリングされたときをちょっと考えてみてください。
不平不満を自分視点で「こうしてほしい、これはだめ」というと思います。他のユーザーやビジネストレンド、技術進歩なんて考えないでコメントします(普通は)。別にそれでいいんです。ヒアリングとは生の声を聞きたいのであって、意見を論じてくれ、ではないので。そして経験上、大半の人は局所的な改善策や追加機能をいうことが多くなります。
アンケートで「もっと小さくて軽いのがいい」とのコメントが多かったので、そのようにつくったら今度は「高級感がない」「小さくて映像が見難い」と散々いわれた、という先のリンクスの事例がこれにあたります(製品開発においてユーザーの意見だけ100%信じて仕様が決まるなんてことはなく、もちろん色々企画段階で紆余曲折はあったとは思いますが、念のため)。
軌道にのってきた飲食店で「もっとワインを増やして欲しい」「肉料理を!」というコメントが多くて、その通りにしたら、一時的にお客さんが増えたが、次第に客足が遠のいたそうです。実は、そのお店は「美味しい日本酒とそれに合う魚介類のツマミを出してくれる隠れ家」として口コミで人が増えていたのです。そのコンセプトからずれたことをしてしまって、結局、単なる居酒屋になってしまったため、本来のファン層が減ってしまったのです。
お客さんの言うことを聞いたら皮肉なことに、という事例です。
デジタルサイネージで考えてみます。
お客さんから「文字が小さくて見えにくい」との声がおおいので、大きくしたら「見難い」「探し難くなった」との声があがった。この場合、文字を本当に大きくすればよかったのでしょうか?もしかしたら、文字ではなく絵などで解決出来た話かもしれません。「文字が小さい」というところだけを局所的に課題にしてしまうと危険です。
このように、お客様/顧客の声を大事にすることは良いことですが、鵜呑みは危険ということです。その先にあるUXも考えて、何をどうすればいいのか、を考えないと足下をすくわれます。
これは、UXを考える上での落とし穴 Part-1 で関係者以外の人から意見を聞きましょう、という話と相反しています。私はどちらも本当の話であり、だからこそ『UXを考えるのは難しい』と思います。
手前みそながら、弊社ではデジタルサイネージに限らず、様々なビジネスや商品において、サービス、UI、デザイン、空間、時間、コンテンツ、ターゲット層等をアカデミックかつグローバルな視点と経験知見から考えて最適解を導いていきます。
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