セミナーで案内サイネージをUXのプロとして斬ってきました
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昨年に続いて今年もデジタルサイネージジャパン2016の専門セミナーにて講演してきました。今年のお題は、
インバウンド対応のサイネージをUXのプロが斬る!!
~その案内サイネージ、使われていませんよ~
です。サブタイトルは元々『その案内サイネージ、使われていますか?』でしたが、これじゃインパクトが弱い、ってことで最後に私の意見で疑問形から『使われていません』と断定にかえさせてもらいました。実際、それぐらい今の日本の案内型デジタルサイネージは使われていると思えない悲惨な状況だと思ったからです。その深刻さをタイトルにいれさせてもらいましたが、ぎりぎりに変更したのでパネルのほうは反映されなかったようです…
今回は、株式会社ネクスウェイの小坂さんと株式会社ビズライト・テクノロジーの戸嶋さんと私の3名で講演いたしました。小坂さんはメディア業界を代表、戸嶋さんは開発会社のシステムエンジニア、そして私がUIUXストラテジスト・デザイナーとして、とそれぞれ異なるポジションの中から色々な視点で話しを展開しました。
セミナーの内容は、前回同様に割愛します。もし聞き逃した、またはもう一度見たいというかたはどうぞご覧ください。
ここではセミナーで言い切れなかったことや補足、裏話を書く事にします。
各業界でインバウンド対応が騒がれている中、デジタルサイネージでは何か代表的か、というとやはり街中でみかける案内サイネージです。地図や行き先案内などです。皆さんも駅やショッピングモールなどで一度は見た事があるでしょう。いえ、一度どころか毎日実は見かけているかと思うぐらい、いまや日常生活圏の中に案内サイネージというのは設置されています。
デジタルサイネージをUXという立場で話しを始めるとデジタルサイネージそのものの定義もかなり広義になってきているため、今回は案内サイネージに限ってお話をしました。UX戦略やUXデザインというと、すぐ、ペルソナやカスタマージャーニーマップを使って戦略的に考えていくメソッドでしょ、と思われるかたもいらっしゃると思います。確かに、それも話したいのですが、デジタルサイネージ業界ではその話しをするのは早い気がしています。なぜかというと、業界自体がそもそも今の案内サイネージ自身の課題を理解されていないのです。クライアントから言われてなんとか納期に納品できた、プレスも出た、関係者からあそこに置けたんだよかったといわれた、と実際に触れるお客さんの声のフィードバックを受けることなく仕事が次へといく(ことが多い)業界です。
ビジネスとしてB2Bですがエンドユーザーは一般庶民なのがデジタルサイネージです。その一般庶民の体験価値を計らずして良い製品/サービスなんて出来る訳ないのです。
あえて実例をあげて説明した
今回はサイネージ関係者、ロケーションオーナーから開発会社、そして広告主ふくめて分かりやすく課題を理解してもらうことに主眼を置きました。そのため、実例を挙げて説明をすることにしました。ボカシたり絵に書いてもよかったのですが、ここは『分かってもらう』ことが重要です。「実際にこれが置かれているんですよ、今もまさに」というリアルな課題メッセージを出したかったのもあります。
そんなわけで場所も写真も晒して解説をしました。まさに『三人で案内サイネージを斬る』です。
実際にかかわったお客さんもいるかもしれないので、大丈夫かなという不安も我々にはありました。こういう場で話すのは吊るし上げているように聞こえるかもしれませんが、ここではUX、つまり顧客体験から分析して課題を共有したかったのです。ですので、「お客さんは、予算や与件や工期なんて分からないですよ」といいました。逆を言えば、その予算や仕様で色々制限されてしまう事が多々あるのも理解しています。その制限を一度考えないでユーザー目線で、これが本セミナーの主旨でした。
案内サイネージにしろサイネージシステムってどこの会社がやっているかなんて看板に書いてません。書いてあるのはパネルメーカ名だったりで、良いも悪いもコメント言う先が分かりにくいですよね。また言ったところで、これはオーナーがおいたので、とか、鉄道会社さんの広告担当の指示で、とか、責任範囲がお客さんからは全く見えない。
私は以前ソニーに勤めていましたが、家電業界は発売するとネット上で散々叩かれます。展示会にだせば、ファンは褒めに来てくれるけれど、不平不満があるお客さんはまったく関係ない商品であってもソニーという名前だけで苦言するひともいました。とにかく他社との比較や市場の声のフィードバックには非常に敏感な業界にいました。一方、デジタルサイネージは業界もそこまでは広くなく、かつB2Bという業界の体質もあるのか、あまり善し悪しの話しが聞かれません。ディスプレイなどのデバイスの優劣の話しは凄く良く聞くんですが、お客さんからのコメントはそこまでは耳に入ってない気がしています。
これこそユーザーテスト/ユーザーヒアリングというUXデザインで必ず出てくる話しにつながるのです。本当にこのシステムは誰のために作ったんだろう、そしてそのターゲットの人に触ってもらったのか、意見もらったのだろうか、と思えるものが多いのです。残念ながら。
実例を使って話しを展開したのが良かったのか「分かりやすかった」とのコメントを非常に多く頂きました。時間の都合で割愛した事例がまだまだあるのですが(笑)、これは次回か別途弊社のセミナーでとりあげようか、など考えています。
セミナーのまとめ
セミナーの最後に3つのポイントを私からコメントさせてもらいました。
– UXに100点なし:色々な視点で全体最適化をしましょう
– ユーザビリティテストは大事:お客さんの声は聞こう
– 世界に誇れるクールなサイネージを:空間や筐体デザインなどにも目をやろう
小坂さん、戸嶋さんからもそれぞれ非常によいまとめのコメントが出ていますのでぜひ聞いてみてください。
私個人の課題は、世界のサイネージをもっと知ること。デジタルサイネージはローカライズされている印象が強く、事実、ワールドワイドでサイネージをやっている日本企業はあまり無い気がしますが、今後はワールドワイドレベルで技術やサービスを見ていく必要があると感じています。
そんな事を考えながらデジタルサイネージジャパンを視察して帰りました。
新しいデバイスやソリューションに色々な可能性を感じつつ、業界の独りよがりになってしまってお客さんが見向きもしないものを置くと、結果としては業界が潰れていく、そんなことにならないよう日々考えていきます。
皆さんも案内サイネージを見かけたらぜひ色々な視点で触れて感じてみてください。
弊社は現在デジタルサイネージシステムやソリューションを自社では販売してはいません。しかし、コンサルや開発アドバイスなどは随時行っております。企画から参入できるとコンセプト含めて全体をUX戦略で考えられるため全体最適化しやすくなります。また今年から自社開発ネタをプロトする予定でいますのでご期待ください。