ハナドケイの時計コンセプトと演出
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マロニエゲート2銀座の1F正面エントランスハナドケイ(HANADOKEI) の中心には、機械式の時計ではなくソフトウェア(CG)でつくった時計を表示しています。単にアナログの三針時計ですが、色々な意味合いがあってシンプルなものにしています。ソフトウェアだからできる演出やちょっとした「おまけ」もあるのです。
前回『待ち合せ場所のUX〜ハナドケイの実例から〜』ではハナドケイ全体について説明しましたが今回はこのハナドケイの「時計」にフォーカスしてお話します。
コンセプト
ハナドケイそのもののコンセプトを決めた時に、時計のコンセプト(方向性)も一緒に決めました。「シンプル」「本物感」「CGならでは」「美意識」の4つがキーワードです。
「シンプル」:ハナドケイの主役は周りの生花であり、主役を殺さないこと
「本物感」:自然(アナログ、リアルの物)と違和感なく融合できること
「CGならでは」:デジタル(ソフトウェア)の良さを生かすこと
「美意識」:機能重視ではなくデザインや演出に美意識を感じられること
これら4つのキーワードから3つのテーマ「フォト・リアリスティック」「アーティスティックなアナログ時計」「ユニークな時報演出」を導き出し,従って設計/デザインを行いました。
フォトリアリスティック
ハナドケイの主役は花とグリーンです。時計はあくまでもサブなのです。
せっかく生花や緑で装飾するのですから、デジタルな尖った時計で目立ってはコンセプトからずれます。とはいえ、ソフトウェアで作られたソフトウェアの時計はどうしても「ディスプレイに表示されている薄っぺらさ」感がでてしまいます。よって、極力そこに物理的な、機械的な時計があるかのように感じられる事、つまり、現実に存在するような時計を製作することにしました。
このようにCG(Computer Graphics) をあたかもそこに現実に存在するかのように見せる技術を「フォトリアリスティック」または「フォトリアル」といいます。光源(照明の光の影響、例えば反射や影など)や物体の質感や動きなど現実世界の現象をシミュレーションし現実に近づけていくのです。
具体的に今回の例では光源、マテリアル(オブジェクトの質感)、色調補正などを行っています。
例えば光源を例にとると、3D空間上に環境用の光源のほかに照射用点光源を2つおいて照明をシミュレーションしています。実際のハナドケイの設置位置の天井には、左右からスポットライトが設置されています(現地で確認してみてください)。このライトをソフトウェア上でも仮想的に設置してあります。よって、影が2重に出るなどの表現として現われています。
アーティスティックなアナログ時計
生花をつかったハナドケイのアナログ感を壊さない為に、時計表示はデジタルではなくアナログにしました。
機能面よりも空間美を意識して1〜12の数字をすべて並べるのではなく、数字はその時間の時刻のみを表示しました。その為、初期のデザイン案としては時針はなく秒針と分針の2針でした。非常にアーティスティックな感じで個人的には良かったのですが、解読性にやはり欠ける、表示ミスと勘違いされないか、と危惧する声もあり最終的には秒針、分針、時針の3針というオーソドックスかつシンプルな構成に落ち着きました。
時計の盤面は、模様などのテキスチャを貼るわけではなくシンプルに一色に。1時間毎にこの文字盤の色が変わります。これは、太陽による光の変化を模した色の変化になっていて、昼間は暖色ベース、夜には寒色ベースになっています。なお針と球体は盤面のカラーに合わせて見やすいよう黒色(開店から16時59分まで)か白色(17時00分〜)に変わります。
ユニークな時報演出
ハナドケイの時計には時報機能がついています。時報の演出は3つのパートに分かれています。
水彩表現演出→ロゴ表示→文字盤構成、となっています。
全ての数字や針が消えて「真っ白なキャンバス」が美しい水彩画で塗り足されていく(水彩表現)。高揚感のある音楽に合わせて水彩が画面いっぱいに塗られると、マロニエゲート2のロゴに切り替わっていきます(ロゴ表示)。その後、文字盤を構成するオブジェクト(針や玉)が落ちてきて通常の文字盤ができあがります(文字盤構成)。
まとめ
今回は、マロニエゲート2銀座のハナドケイの中心部に設置してある時計のコンセプトと演出について、ざっと説明しました。百貨店において「時計」を置く事はかつては(今も?)タブーだったようです。そのあたりについてもまた機会があれば記載したいと思います。
さて、このハナドケイの時計、実は15分おきにちょっとした演出があります。お立ち寄りの際にはぜひチェックしてみてくださいね。