待ち合せ場所のUX 〜ハナドケイの事例から〜
読了時間: 約 6 分
今年2017年の3月にマロニエゲート2銀座の1F正面エントランスにハナドケイ(HANADOKEI) をプロデュースしました。他には例を見ないハナドケイをどのようにして考えたか、ハナドケイの演出の秘密など少しずつブログで明かしたいと思います。
まず初回は、1Fエントランスを「待ち合せ場所」として提案しハナドケイを考えた事にしました。
もともとは、1Fエントランスのデジタルサイネージに関わる案件でした。恐らく他の会社は、どんなサイネージをどこに置くと良いか、という提案だったと想像します。大画面のディスプレイを複数台置いて同期させる、とかでしょう。
これに対して「そもそもデパートの1Fはどうあればいいのか」「お客さんにとってどういう空間であると満足できるのか」と一度サイネージありきの概念を切り離して考える事にしました。
さて、商業施設にとってのエントランスは、いわば顔です。ブランドイメージがそこで決まるといっても過言ではありません。家においても玄関をみればその家庭事情や家柄がわかるともいいます。
そしてなんといっても百貨店等の商業施設で重要な事は集客力です。ネットショッピングがこれだけ便利で、多くの人が利用している中で、わざわざ来て頂ける、そういった強い何かが必要です。その為にも、まず「なんとか来てもらう」「集まってもらう」ためにも、ここを待ち合せスポットに出来ないか、と考えました。
待ち合わせ場所のUXと要件
待ち合せしたお客さんが必ず買い物をするとは限りませんが、『人が集まる』ということは『活気がある』となりブランディングイメージにも繋がってきます。また、人が集まっている方が入店しやすいという心理が人は働きます。
皆さんはどこで待ち合せしますか?
渋谷だとハチ公前、銀座はソニービル1F(現在改築中)、新宿だとコマ劇場前とか。また、◎◎駅の北口改札出たところ、駅前のスターバックス前とかでしょうか?
海外に目をむけると、パリだとオペラ座やサンミッシェル広場。ニューヨークだとグランドセントラル駅の時計台などが有名です。
さて、ここで質問です。
なぜそこは待ち合せになるのでしょうか?
なぜそこにしたのでしょうか?
恐らく、「分かりやすいから」「覚えやすいから」「(駅などから)近いから」といった地理的な原因、そして「待つのに居心地が良いから」「周りも待ってる人が多いから」といった心理的な理由があります。
これらをユーザの体験(UX)をベースに考えその要因を洗い出してみました。そしてそこから、なにをすれば良いかを導出しました。
ユーザの体験(UX)やニーズ | 要因となるモノやコト | 考えた対策、アイデア |
---|---|---|
分かりやすい 覚えやすい 伝えやすい | 駅に近い ランドマークがある(店など) | マロニエゲートの場合は不要 |
居心地が良い | 自然を感じる(水の音、緑が見える等) おしゃれな、または、癒し空間 | 季節を感じられること 銀座の中で自然を感じられる事(花やグリーン) アートや緑に囲まれる美術館風の空間 良い香りがする |
ちょっと休める | ベンチやもたれかかる壁がある 荷物をおける棚やベンチがある | ベンチを設置する 背中側に壁状のものを設置し自分の空間をつくってあげる |
飽きない | なにか動くものがある(時計、水流、映像コンテンツ等) ヒューマンウォッチング | 芸術的なコンテンツを用意する(映像+音楽+香り) インタラクション 時計 |
ハナドケイのエッセンスはこの表にも要所要所にちらばっています。
実は当初、ベンチもハナドケイ要素にありました。残念ながらクライアントとの議論の末、企画からドロップすることになりましたが、せっかくなのでベンチがあったときのスケッチを公開します(時計等の意匠はかなり実際とは異なっていますが)。
もしかしたら、いつかベンチが取り付けられるかもしれませんね.
そうそう、待ち合せ場所の調査検討をしていた時に面白い事を発見しました。それは、待ち合せ場所の周囲の情景について実はあまり記憶にないようです(個人差はあります)。
例えば、渋谷のハチ公やモアイ像。像はどっちを向いていたか聞くと案外覚えていない人が多いのです。何度もそこで待ち合せしていてみているはずなのに。
細かい事よりもざっくりとシンボルになる物がある、とか、とにかく印象に強いモノがあること、が大事のようです。
まとめ
マロニエゲート2銀座の1Fエントランス空間を検討するにあたり、「ここを待ち合せ場所にしたい」とまず考えました。次に、では、なぜ待ち合せ場所ができるのか、そこを選ぶのか、ということをユーザの体験(UX)や視点などから検討していきました。
スマフォ普及率を考えると、どこで待ち合せしても精度高いGSPが目的の場所に誘導してくれます。しかし、「待ち合せ」となると、意外に昔ながらの場所などが選ばれるのです。そして、壁際や隅っこに集まり時間を潰していく…決して広い場所のど真ん中は待ち合せ場所にならないのです。
生活がITにより便利になっていく中で、なんだかんだ人間はまだアナログ的な部分、生物としてのプリミティブな一面がしっかり残っていて、それが行動に潜在的に現われてくる、のが面白いところです。
今回ご紹介した待ち合せ場所の要件分析以外のハナドケイについてのビハインドストーリー、また機会あればご紹介します。お楽しみに。