デモやプレゼンテーションにもUXを!
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UX (顧客体験) を考えていく必要があるのは、何もアプリや製品開発だけではありません。デモや発表会のプロデュースとUXについて今回はお話します。
新しい技術やサービスを世の中に出すまでには、社内外に発表(デモンストレーション)する機会が何度かあると思います。どんなに凄い技術であれ製品であっても、そのデモの仕方次第で「ダメ」とレッテルが貼られてしまうのです。そんな悔しい経験ありませんか?
デモや発表のやり方まで含めて技術開発やコンサルティングしている会社はあまりないかと思いますが、実は弊社が得意とするコンサルティングの一つなのです。
さて、デモや発表会でいうお客さんは誰でしょうか?
傍観者です。ただし、そこには社内の決定権を持ったプロジェクトオーナーやマネージャー、将来コラボレーションすることになる会社の営業さんなどもいます。同じ分野のエンジニアや一般人も居ることもあるでしょう。
それぞれ傍観者はそれぞれの期待で観ています。新しい技術を見たい、知りたいだけでなく、この製品やサービスは本当にローンチしていいのかというビジネス判断をしにくる人もいます。UXデザイナだと、顧客体験として問題ないか、ちゃんとコンセプト通りかなどを確認することでしょう。
ここで、技術や製品のデモやプレゼンテーションで失敗または損しているケースをざっと整理してみました。
ユースケースや体験とのかい離
要素技術やその機能の凄さだけを発表してしまい、実際のユースケース(利用シーン等)が見えないのが原因です。ユースケース含めてしっかりデモをしているようでも、あまりにも唐突すぎると強引な設定になり傍観者は違和感を感じてきます。また、説明なしの前提条件から始るケースもよくあります。しかし、関係者はその製品やサービスに慣れているため、ついつい「こういうケースは良くある(または求められているはず)」と思い込んでしまうのです。
似たようなケースとして、技術内容が高度すぎて分からなかったり専門用語だらけで全くわからないデモも良くみかけます。その専門分野ばかりが集まるデモであれば問題はありませんが、進歩性/新規性の中に実用例(ユースケース)なども織り交ぜてこそ、より生きてくる技術もあります。
完成度のゴールを見誤る
技術屋(エンジニア)は自分の精根込めて開発した技術をしっかりすべてを伝えようとします。極力、すべての機能が現実に動く事を重視します。私もエンジニアですから気持ちは非常に良く分かります。しかしここに落とし穴があります。
デモ当日ギリギリまで開発/実装していたためにデザインなど含めて全体が統一されていない事があります。また、テストを充分できなかったことによってアプリが誤動作するなどデモそのものが動かずに終わるケースもよくあります。
発売やローンチ直前のデモを除くと、すべての機能を動かし、シーン/ユースケース/UIを見せることは実際は稀なのです。技術アピールするところはしっかり見せつける。ただし、そうでないところは、フェイク(擬似)でもいいからちゃんとデモが動作するよう安定性を求めつつ、しっかり体験を感じてもらうのが大事です。デモ会場は思いの外、暗かったりうるさかったりWi-Fiが飛び交っていてネット環境が不安定だったりと想像以上の事がおこります。そんな中でも伝えたい事がちゃんと見せられるようなデモをする事をゴールにするべきです。
情報の満腹感
人間はずーっと集中して見聞きするのは辛いものです。どんなに凄い技術発表であったとしても、ずっとは緊張して集中しては聞いてはいられません。しかし、得てしてデモする側は、あれもこれもとすべてをアピールしがちです。詰め込みます。
人間は物事の最初と最後が意識として残りやすいのです。心理学ではこれを”初頭効果”、 “親近効果” と呼んでいます。起承転結とまではいわないまでも、デモにも緩急が必要です。それは内容だけでなくデモプレゼンテーターのトークにもいえることです。
こういったことを考えてデモシナリオを組むのもUX的なアプローチだと思います。
華がない
人になにかを見せるという場においてはやはり華(はな)が必要です。
技術デモに華は必要ないかもしれませんが、たとえばCGでなにかだすのであれば、単純な円や直線が出てるよりも派手なほうが目につきます。どんなすばらしい製品や先進技術であってもアイキャッチなデモとデモ会場作りがないと、誰も見てくれないことになります。
もちろん見栄えばっかりで中身がスカスカでは本末転倒ですからそこは間違えないよう。
まとめ
他にも気をつけないといけない点はありますがざっと記載しました。
デモを成功させるには、技術や製品そのものの本質だけでなくデモ自体もしっかりデモ傍観者(ここではユーザー)の事を考える、UX視点で考えることが重要です。
そのデモで売りにしたい事が、“簡単に分かりやすく伝わる”のが大事なのです。ついついデモは独りよがり的なものになりがちです。
心理学的なアプローチや演出といったことも考えていく必要があります。この他にも人の流れやデモプレゼンテーターの言動など考える事は色々あります。
弊社では、大手メーカの次世代UI/UX開発や通信事業メーカの次世代システム研究開発などにも携わっています。その開発における社内外デモについても、上述のポイントをしっかり抑えてプロデュースしています。
たかがデモ、されどデモです。
デモの結果がプロジェクトの存続を決めることも多々あります。
良い技術やサービスなのになぜか食いつきが悪い、社内で賛同者が得られ難い、という方は一度デモのやり方も再考しているとよいでしょう。
もちろん、弊社でも協力できるかと思いますのでお気軽にご相談ください。